そういえば、最近めっきり服屋さんに行かなくなった。
家にいながらポチっとな、で買えちゃう時代だもんな。
それはまあ楽でとてもいいんだけど、出来れば試着したい派の人間なんです。ぼく。
ネットの写真だけじゃサイズ感の勘違いが多々あり、
届いてから、『っおい!!!!!』ってなるから。
じゃあ、直接買いに足をはこべよ!歩けよ!
という単純な話なのだが、僕にとっては単純じゃない。
店員さん。店員さん。店員さん。。。がいるよね。
逃走中のハンターのサングラスの中に鋭い眼光を想像するように、
店員さんの笑顔の裏に秘められた何かに怖気づいてしまう。
なんか徐々に近づいてきてるな…。わしにはわかるぞ。
一歩には二歩で対応だ。
よしっ!距離感良好。
…って、こんな遊びをしている場合ではない。
意識をいち早く服に戻さねば、ここにいる意味がないぞオレ!
さてさて、
この棚の上にあるのとかどうやろ
よいしょ
・・・
あっ、あった。
目が。
今確実に目があいましたね。おねえさん
・・・
(来ないでください、来ないでください。来ないでくださいー。)
僕はただゆっくり自分のタイミングで服が見たいだけなんです。
コツ、コツ、コツ。
『いらっしゃいませ~。』
『どういったものをお探しでしょうか~?』
『…あー、えっと…。なんとなくお店に入ったんですけ…ど。』
『あっ!そうなんですね~。
先ほどのボトムスとかお似合いやとおもいますよ~。』
『えっ、は、そ、そうですかね…。』
(みてたんだ。やっぱり、見てたんだ…。)
(ってことは、きょろきょろビクビクしてたのも見られていたわけだ)
(穴があったら入りたい、そしてその穴を上から埋めてほしい。)
赤面必至だよ。
『ご試着なさいますか~?』
『じゃあ、お願いします……。』
(何が『じゃあ、お願いします……。』だ)
(よく見た結果、この服は買わない方向で考えていたはず…。)
(いや、ここはポジティブに考えよう。試着室は冷静になれる場所なんだから)
『こちらでおねがいしますー。』
『はい。』
がちゃん!
(ふ~~。。)
(あれ?なんか老けたな自分。)
(目も充血してないか? ん?こんな所にニキビできてる。)
(この試着室の鏡はちょっと太くみえるな。いや、そうでもないか。)
『お客様、いかがですか~?』
びくっっっつ!
『え、、あ、て、、、とてもいいですー。』
(一人の狭い空間に落ち着きすぎて、本分を忘れていた…。)
急げ、、なかなか怪しまれてるぞ。
って、はあっ、、、、、、、、、、、
ごとんっ! がたん、ドン!!!
やらかしたー、、足が引っかかり壁にむち打ち。いたい。
『お客様、大丈夫ですか~?』
『は、はい!!』
(なんか焦りすぎて思いのほか大きい声でた)
(こんなんもう不審の権化)
(おうちにかえりたいよぉぉぉぉぉおお。)
いち早くここから出ることが先決問題と考え、
試着はせず、冷や汗だくだくで飛び出した
もう、そこからの記憶はうっすらとしかない。
何円札を出し、おつりはいくらもらい、ポイントカードの会員入会をどう断ったのかも曖昧。
ただ、店員さんの笑顔は終始崩れることがなかった。
気づけば僕は、真新しい紙袋を抱え、ショッピングモールを彷徨っていた。
ただ、ひたすらに。
あれから、あの店には行っていない。
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