雑貨屋さんで動物の小物を真剣に見ていたら、自分によく似た雰囲気を纏った金髪の女性がその一角にやってきた。
今いる通路は狭くて、どちらかがいなくならなければ全ての動物を吟味することは不可能に近い
彼女からは「いつまでおんねん」と思われているに違いない。
僕ならそう思うから。
彼女の目の前にクマ
僕の目の前にはアヒル
(このままでは喰われるっ)
と咄嗟に感じ、右向け右で逃げた。
でも、彼女を避けたと思われたくなかったので慎重に歩くことは忘れない。
離れた所から少し様子を伺うと、
彼女は微動だにせずクマを見続けていた。
彼女は僕がいなくなったスペースをがっつくように占領することを恥じているのではないか。
僕ならそうだから。
なんか悪いことをしてしまったなぁ
ほんとはアヒル見たいのかなあ
とあれこれ案じている僕を置いて彼女はいつの間にかいなくなっていた
気配も雑音も消して移動したのか
スペシャリストではないか
レジをみてもいない
あぁ、スペシャルなお方だ。
僕と似ているが、僕ならリュックの紐を雑貨にひっかけてガッシャンガラガラしてしまったりしているはずだから
そんな想像に身震いしたら、僕もすぐさま帰りたくなった。
どこかに。
あぁ、
やっぱりクマ買わなかったんだ。
と思いながら店を出た僕が人差し指だけで持つ袋にアヒルはいない。
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