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灼熱野球

ダメだだめだ…
 
汗でびっしょりな朝なんか嫌だ…。
 
 
数秒前まで
僕は夢の中で憤慨しながら野球をしていた。
 
 
 
ひどい炎天下の中での野球。
 
そんな中、キレることでさらにあがる体温。
僕はこのままだと爆発してしまうんじゃないかと本気で思った。
 
 
 
見慣れない顔が並ぶ校庭。
そこは、僕が通っていた小学校だった。
 
 
僕は、えぐみを含んだ極度の人見知りなのに
なぜこのメンバーで野球をすることになったのだ。
 
お前もお前もあんたもだれや
 
 
 
そんな皆を見ているとなぜか
文句が身体の芯から次々と湧き出てくる。
 
口が止まってくれないのである。
 
これは本当に僕なのだろうか?
 
 
 
最初は試合形式の練習をしていたのだが
大ゲンカになり、すぐにやめた。
 
 
そしてなにが始まったかというと
ひたすら半円を走るというペナルティー的な練習だった。
 
それも僕の指示で…
 
 
シャトルランみたいに
一定のラインまで走り切り返す、そしてまた走り出し、切り返す。
ということを繰り返させるのだ。
 
この練習が野球に活きるとは到底思えないし、
 
なぜ、みんな僕の言うことをきくんだよ、
野球やめて、帰ろうよ。あついしさ。
 
だけど、みんなやめない。
 
僕は一体何者なんだ、、、
 
そこには2人の自分が存在した。
混在する、「熱い自分」と「冷静な自分」。
 
 
 
そしてとうとう自分の番がきてしまった。
だけど、めちゃめちゃキレているイカれ野郎を応援する奴は1人もいない。
 
 
なぜかそれがすごく悲しかった。
そう感じたのは、熱い自分だった。
 
 
シーンとした校庭は灼熱地獄。
 
 
疎外感に忸怩たる思い…。
だが、走ることはやめれない。
だって、こんなにも沢山の人を炎天下の中走らせたのだから…。
 
 
なんなんだこの状況は…。
冷静な自分。
 
 
と、その時bgmが流れ出した。
24時間テレビのマラソンみたいに。
 
「あたまのなかで、おもーいだせ!
あたまのなかで、おもいだせ!」
 
 
ん?この歌はしらない…。
これが永遠に続くだけなのか。
 
まず、なにを思い出せというのか…。
 
 
こういう時って
「サライ」とか「負けないで」とかじゃないのか。
 
 
 
前衛的な歌に、驚きだよ。
 
 
だけど、
この歌には摩訶不思議なパワーがあった。
 
 
今の自分にぴったりな気がしたのだ。
誰の声かも、誰が作ったのかもわからない歌。
 
 
頭の中で響くノイズのようなサウンドに
感情が沸騰し、また体温があがる。
 
 
 
そこで、もう限界。
いてもたってもいられず、ようやく目覚めた。
 
 
 
「あたまのなかで、おもーいだせ!
あたまのなかで、おもいだせ!」
 
 
 
 
 
あつい…。
そうか、夏って、もうすぐ終わるのか。