買ったお弁当を車の中で食べながら
五人であぁだこうだ言う時間は二度と訪れないんだろうなと思ったら
やりきれない気持ちが右往左往する。
「卵乗ってるやつにしてもよかったのに。何十円の違いやろ?」
「りんごジュースだれー?」
「これ食べられへんから食べてや」
「ストロー入ってへんねんけど」
「それでお腹いっぱいなるか?」
「もういっこの、から揚げのったやつとどっちしよって迷ってんけどな」
「それ辛いやつちゃうか?」
「このいれもんなんかにつかえんちゃうん?」
「だからあっちにしときって言うたのに」
「くちゃくちゃくちゃくちゃ」
「これソースか醤油かどっち?」
「ソースやろ」
「今日鼻つまっててあんま味せーへん」
「ごみここ入れてや」
「この道わかるか?」
「ほなそろそろ走り出すで」
「帰りイオン寄っていこか」
「お墓までまだかかる?」
「この子おしっこ行きたいみたいやわ」
「もう着くけど我慢できひんかったら言いや、コンビニ寄るから」
この調子だと
お弁当も人間も神様も仏様も憎んでしまいそうになり、
重力に逆らわず瞼をおろすことにした。
そうして眠りにつけたのに、
車に充満したお弁当のにおいが、また僕をからかう。
五人家族の僕を
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