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おもいでのゆくえ。

 
駅前のスーパーで小学6年生の頃担任だった先生を見かけた。
 
 
あれから10年以上経ったのに、見た目が何も変わっていなかった。
 
 
 
あの頃先生は僕のことをよく褒めてくれた
 
 
 
習字の授業では、
「この思いっきり具合がとっても良い。二重丸。」
 
と、ただただ大きく書いただけの汚い字をみんなの手本として紹介してくれたり
 
 
ある日の体育では
 
普段陰鬱で大勢の人前では決して発言などしなかった僕が好きなバスケットをする時は生き生きとすることを知って、僕をバスケのリーダーにしてくれた。
 
 
チーム編成、ルールの説明。
 
「全部任せるから」
 
その後も体育がバスケになると必ず仕切り役に選んでくれた
 
存在意義をやっと一つ見つけることができた気がして嬉しかったし、なぜかこの時だけはみんなの前で声が震えず話ができた。
 
 
先生は多分全てわかりきっていたのかもしれない
 
 
その証拠に、それ以外で僕を学級委員長にしようとしたりは決してしなかった。
 
 
僕の中にある硬くて分厚い殻にヒビをいれてくれ、自分から産まれてくる手助けをしてくれた感覚だった。
 
 
その他にも
運動会の騎馬戦で活躍した時。
「あんたのおかげで白組が勝った」と言ってくれた。
 
 
卒業式の練習で大声で返事をした時。
怒られるのが嫌で大きい声を出しただけなのに、いつまでもいつまでも褒めてくれた。
 
 
影の薄かった僕の影を殺さずにそっとしておいてくれた珍しい先生だった。
 
 
だけど、
そんな先生に怒られたことが一度だけある。
 
本当にたった一度。
 
 
それは友達と意見が合わず昼休みに喧嘩をふっかけられた時のことだった
 
 
僕はなにも言い返さなかった
 
先生はどこかからそれをみていたのだ
 
 
その日の放課後
卒業文集の居残りをしていると、先生は僕の元へ近づいてきてこう言った
 
 
「あんたは優しすぎる。
なんでそんなに人に優しいん?
 
 
もっと自分勝手に生きなさい
 
言いたいことがあるなら言ってやりなさい
 
腹がたつなら怒ればいい
 
喧嘩したっていいんやから。」
 
 
 
やっぱり先生は僕という人間を看破していたのだった
 
 
 
僕は目がしょぼしょぼして、
居残りはもう一日延びることになってしまった
 
 
 
 
 
そんな偉大な先生が目の前にいるのに話し掛けることができなかった
 
 
むしろバレはしないかと隠れようとさえした
 
 
 
先生とは違い、不甲斐ない自分はあまりにも変わりすぎていた