人生にターニングポイントがあるとするなら、
あの本に出合ったあの時は、多分その一つだと思う。
僕は難波にいた。Zeppなんば。
好きなアーティストのライブ。
開演の時刻が近づいてきた時、1ドリンク代の500円がないことに気づいた。
財布の中には五千円札と一万円札。
これはまずい。と。
お金を崩す手段としてコンビニならそこらにいっぱいあったけど、何かが違うかった。
全てを通り過ぎる。
僕はなぜか本屋を探していた。
理由はわからない。というか、ない。
やっとのことで見つけた本屋。
買いたいものなんてなかったのに、買う本は一瞬で決まった。
その本の表紙には猫がいた。小説。
頭はライブのことでいっぱいだったから、小銭ができればそれでよかった。
ライブは盛り上がったし、高揚感もそれなりに持ち帰ったはず。
だけど、その日の主役はライブではなく、【猫の小説】だった。
帰ってからが本番だったのだ。
せっかく買ったからじゃなく、やっと読めるという気持ちになるとは。
疲れているとか、眠たいとか、明日の事とか関係なかった。
普段小説を読まないからとか、あほやからとか関係なかった。
その日の内に全部読んだ。
何かが変わる、動く、生々しい音がした。
自分にしかわからない、周波数。
本一冊で生きやすくなったとでもいうのか。なんというのか。
知ってしまった、というのが一番しっくりくる気がする。
今思うと、あの一連の行動は何者かに憑りつかれているような感覚があった。
決められたルートを歩いて、決められたものを買った。という。
ターニングポイント
ふと訪れる、予期せぬ出来事こそが人生そのものなのかもしれない。
おしまい。
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