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電飾

 
 
 
近頃はイルミネーションで張り合う一軒家が少なくなったなぁとクリスマスが間近に迫り思う。
 
 
僕が小学生の頃は競い合うように豪華に仕立ててある一角があって、通っていた学研の帰りによく眺めながら帰った
 
 
大きなサンタが家を登っていたり、グラデーションに目を奪われたり”クリスマスがいよいよ来るんだ”という熱狂に満ち溢れていた
 
 
その同じ頃、学研が終わると既に暗くなった帰り道を一度だけ違う道で帰ったことがある
 
 
理由はなかったのかもしれない
 
 
ふらふらと自転車で右往左往しているうちに何匹かの野良猫と出会い、知らないピザ屋を通り過ぎ、行き止まりに急ブレーキをかけた
 
 
いや、厳密に言えばそこがたまたま行き止まりだっただけでブレーキは自然と握らされたといっても過言ではない
 
 
あたり一面にはとてつもない数の電飾が張り巡らされ、異世界に飛び込んだようだった
 
その一角に8軒ほどあった大きな家の全てが動くように輝いていた。
 
その光たちは僕の目にも映り、確実に心をかき乱し捏ね合わせた
 
 
なぜ僕の家はイルミネーションがないんだという、安っぽい事実が入り込む余地はなかった
 
 
僕は10分ほど動けずその世界に浸り何かを感じていた
 
 
本当に綺麗だったのだ
 
 
その景色をこんなにも鮮明に思い出せるのに、どのようにその場所へたどり着いたのかは全く思い出せない
 
 
次の学研の帰りも、その場所を目指したがイルミネーションは一向に姿を見せず、暗い道ばかり通っていることに怖くなり迷わぬうちに帰った
 
 
たった一度だけの世界
 
 
あそこに住む子供はどんなクリスマスプレゼントを貰っていたのだろう
 
 

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