さむい。さみぃ。さんむっ。さぶさぶさぶ。
はよう、あったかくならんかなーと、毎年春を待ちわびるけど、
春はそんな生ぬりぃ季節じゃねーんだよねーんだよねー。
はなのおこな。花のお粉。花粉。
花粉が「ほーら、春ですよー」と言わんばかりに優雅に舞うから、
オイラの目は神聖なお水で清めてほしいほどの痒み。
真っ赤に充血して充血して、立派な赤珊瑚を宿すことになる。
赤珊瑚を眼球からひょいと取り出せたら、お金になるから全然問題ないんだけどね。
むしろ、嬉しくて嬉しくて四六時中無我夢中、瞬きを我慢してバイク乗り回すよね。
でも、そんなことあるわけないからね。
世にも奇妙な物語になるもんね。
現実は涙、鼻水ズルズルの顔で闊歩する、妙ちきりん
すれ違う子供達が顔を見上げ泣きじゃくる。
ママがオイラを睨んでる。
ママの目は真珠のように白い。
なにくそ、と思いながらも
未来を見据え、眉間に皺をよせながら歩く。
その姿はこの世の憂いを一身に背負う傑物にみえていたりしないだろうか。
そしてその時、
老舗団子屋のご主人からお声がかかるのだ。
「ちょいとおまちなすって、そんなズタボロで。旅も疲れたことでしょう。」
「わかりますか?」
「ええ、ええ。わかりますとも。
ウチの団子食べていっておくんなまし。
お代は結構ですので、ほらほらそこに腰を下ろして。」
「そうですか、やはりわかる人にはわかってしまいますか。ふふっ、かゆ。」
……………………………
「おいおい、お菊、あいつの目の中のアレ見えなかったか?」
「わたくしが見落とすとでも?」
「ふはははは、今日はもう店じまいじゃ、当分の間休めるよう店先に張り紙も用意しておくれ、どこまでもつけてやるぞ、」