わたくしは
ロングヘア学園を中退いたします。
ここ二年間は金髪ロン毛に忠誠を誓い、
持ちつ持たれつの関係で人生を歩んできました。
来年は最終学年である
三年目に突入しようとしていたのですが、
冬休みに入る直前の終業式でのこと
髪を地べたに引きづり引きづりしながら登壇した校長先生がどこか不潔に感ぜられたのであります。
その僅かな違和感がしこりのように残り続け、
「三年生はもうすぐ卒業です。そして二年生は最高学年になります。より一層自覚をもって行動することですよ」
と言う校長先生の言葉が聞くに耐えなくなっている自分がいたのです。
どうしたものかと悩み、迷い
友に相談しようかなどと思ったこともありましたが
「今年の冬はトリートメント合宿を行うんだあ」
と息巻いている彼らのまえでは
この疎外感がチンケな戯言として吹き飛ばされてしまいそうで、虚しさに変えて持ち続けることを選んだのです。
さらには、私立タンパツ学院の生徒さんと道端ですれ違う度に
長い髪の毛を誤魔化すようにボサボサと触る癖まで身についているではありませんか
そんなどうしようもない空虚な日々が続く中、
学園を中退する決定打になったともいえる場面に出くわすことに。
五日前のお昼、
違和感の原因であるあの校長先生が学園の喫煙所でタバコを吸っていました。
校長先生は冬休みにもかかわらず学園の大掃除をしに訪れていたらしいのです
部活に参加するも
心と体がちぐはぐでフラフラな僕はついにその場から抜け出し、偶さか体育館裏の喫煙所の側を通ってしまったのです。
丁度その時、喫煙所にあるベンチから立ち上がろうとした校長先生が自分の髪の毛を踏みつけ倒れてしまいました。
僕はすぐに駆けつけ体を起こすのを手伝いました。
校長先生の服の汚れをはらい、「大丈夫ですか?痛い所はないですか?」と顔をみるとまさかの別人に。
つんつるてんの頭…
そう、あの、お長いお長い髪の毛は
カツラだったのです。
あまりにも驚き、口をあんぐりとさせた僕に
校長先生は転がったカツラを拾う事なくこう仰られたのです。
「今ある髪の毛をこれ以上ぞんざいに扱うことは神への冒涜じゃよ」
「あんたの意志はもうここにはないのではないか?」
「人生は一度きりなのだから」
「こう…ちょう…せんせい…」
「ぼく、あなたのもとで…」
「君は2年2組の城ヶ崎君だね?」
「2年5組天谷です。さいなら。このつるっぱげ。」