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Story

救恤

 
 
さむい。さみぃ。さんむっ。さぶさぶさぶ。
 
はよう、あったかくならんかなーと、毎年春を待ちわびるけれど、
春はそんな生ぬりぃ季節じゃねーんだよねー
 
はなのおこな。鼻。いや、花のお粉。花粉。
 
花粉が「ほーら、春ですよー」と言わんばかりに優雅に舞うから、
オイラの目は神聖なお水で清めてほしいほどの痒み。
真っ赤に充血、充血、立派な赤珊瑚を宿すことになる。
 
涙、鼻水ズルズルの顔で闊歩する、妙ちきりん
 
すれ違う子供達が顔を見上げ泣きじゃくる。
ママがオイラを睨んでる。
 
ママの目は真珠のように白い。
 
なにくそ、と思いながらも
未来を見据え、眉間に皺をよせ歩く。
 
その姿はこの世の憂いを一身に背負う傑物にみえていたりしないだろうか。
 
 
そしてその時、
老舗団子屋のご主人からお声がかかるのだ。
 
「ちょいとおまちなすって、そんなズタボロで。旅も疲れたことでしょう。」
 
「わかりますか?」
 
「ええ、ええ。わかりますとも。
ウチの団子食べていっておくんなまし。
お代は結構ですので、ほらほらそこに腰を下ろして。」
 
「そうですか、やはりわかる人にはわかってしまいますか。ふふっ、かゆ。」
 
 
……………………………
 
 
「おいおい、お菊、あいつの目の中のアレ見えなかったか?」
 
「わたくしが見落とすとでも?」
 
「あいつはこの時期になると噂になる、貧乏人や困った人に赤サンゴを与えてまわっているというやつに違いないわい…」
 
「先日も、突然大金を手にした病人が医者に診てもらえたと、隣の奥様に聞いたわ。あれを奪えばあたいたちも…」
 
「ふはははは、今日はもう店じまいじゃ、当分の間休めるよう店先に張り紙も用意しておくれ、どこまでもつけてやるぞ、」
 
 
かゆー。おだんごおいしっ。かゆーー。
 
 
 

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