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Story

朝。

 
起き抜けに窓を開け放つ。
 
 
ここにあるのはバルコニーとは決して言えないベランダとも言い難い、物干し竿が主役の空間。
 
 
貰い物の少し高級で無知な紅茶を百円のティーカップに淹れ、食べ慣れた買い慣れた食パンを焼く。
 
 
待ち時間はマーガリンの上から横から論争についてにあてがう。
 
 
これまた百円のソーサーにのせたカップをカチカチといわせながら窓際まで運び、紅茶を一口含んだ。
 
 
数時間ぶりの水分が食道に吸い付きながら胃に滴る。
 
 
“ふーん”と強めの鼻息をもらすと漸く香りが広がり、トースターが”ちーん”と呼ぶ。
 
 
机が見当たらないので再びカチカチと鳴らし足をぷるぷるとさせて食パンを迎えにゆこう。
 
 
紅茶と食パンを窓際の地べたに並べ、開け放った窓から未だ寝ぼけたままの足をほうり出した。
 
 
足裏とベランダのコンクリートによる(ぺたり)という音は、最初の紅茶が全身にまわったことを知らせた。
 
 
 
 
あいにくの曇り空に昇っていく紅茶の湯気にピントを合わせ
 
「そーさー要らなかったな。」と独りごちた。