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Story

現実

 
「日本人宇宙飛行士本日宇宙へ。」
 
 
テレビで知ったその日、
私は空を見上げることができなかった
 
宇宙船の中にいる人の夢、私以外の全国民の夢が
頭上にあると思うと怖くなった。
 
おそらく、いいや確実に。
 
私が100歳まで生きたとしても
電車一駅分と同等の金額で宇宙旅行が可能になることはない。
 
(今すぐにでもこの惑星から出ていきたい人類はどう生きるべきなのだろう)
 
などとそれらしい独り言を言ってみたが
結論私が宇宙に身を預けることはないという事実は揺るがない。
 
 
現に、こうしている今も
私は二つの車輪と共に地上を進んでいる。
 
ペダルを踏み込めば私はどこへだってゆけるのだ。
 
突然生まれおちたこの地で生ぬるい風に吹かれ、ポッケには液晶に亀裂の入ったスマホ。
 
そして、のど飴を舐めている。
 
 
“龍角散”
 
 
可愛いとは言い難いが効くと信じさせてくれる名前。
 
 
かちゃかちゃかちゃ
 
口の中で踊るのど飴。
 
 
私はこれからどこへいこう。
 
 
(今日はヒゲの先輩がいるのに?)
 
 
あのフロアで活躍しまくるヒゲの先輩。
 
そうだ、20分後、赤い看板のドラッグストアでレジのアルバイトだ。
 
 
私は龍角散を舐めている。
 
 
可愛くはないが効く!
 
いい声よ、でておくれよ。
 
 
口を開けるとスースーするのが気持ちよくていつもより遠回をしたくなった。
 
スースースースー
 
誰にも見せられない顔で自転車を漕いでいる。
 
すると、目の前に横尾忠則が描いたであろう三叉路が現れた
 
 
私は立ち止まり考える。
 
 
はて、どちらの道を進めば宇宙へゆけるのだろう。
 
 
 

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