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Story

土臭い

 
 
コロリと懺悔するように佇む松ぼっくりを拾おうと屈んだら膝がポキっとなったから、きつく凝り固めた表情が綻んでそのことがおならをした時のようにすごく恥ずかしくて、周りを見渡してみたけどあるのはどっぷりと浸かった秋で。
 
冬といってもなんら申し分ない寒さの中、
木枯らしにも負けず決死の思いで手にしたぼっくりを手の中で遊ばせているボクの横をスキップで通り過ぎようとする、ふくよかなオバチャンの背中にぼっくりを投げつけたら綺麗に跳ね返ってきてくれるという由無し事で支配された思考から手から巣立たせた瞬間、オバチャンはダウンジャケットの中から手を出した。
 
その御手が当たり前のようにキャッチャーミットになっていて
「ストラーーーイク」と甲高い声を出しキャッチしたあと砂埃が舞った。立場的に逆転してしまったことにへどもどしているボクが心臓ばくっばく、キョロロロ瞳でオバチャンを捉えた時には距離ゼロの所に鎮座しておりキスをされた。
 
3秒後思考が舞い戻るボクは
祖父の部屋にある頑丈で猛然と廻り続ける地球儀でコイツを殺してやろうと、初めて(ふぁーすと)を奪われた事に利き手がわなわなと力み始めたことで、昨日ポジションをもぎ取られた事実を思い出した。
 
ファースト。
 
ファーストはストライクをとれない。
とれるのはアウトアウトアウトなんだと言いつけてやる前にバシンと抱きしめてくれたオバチャンに子供と大人の透目で漂うボクは「ナイスキャッチ」と一文字ごと途切れ途切れに言う。
 
流涕していたから。
 
流れは流れに身を寄せシミになった。
 
帰ったらユニフォームをちゃんと洗ってやろう。
 
自分の手で。
 
 
 

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