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Story

旋毛曲がり

 
 
ピピーッ!!
 
彼は転がるボールに狙いを定め、顔から飛びついた。
 
一人の選手がうずくまって動かない…
 
彼は、側にいた選手の足ごと鷲掴みにし、
その足があらぬ方向へ曲がってしまったのだ。
 
怪我をした相手チームの選手はすぐに担架で運ばれ、彼は退場となった。
 
会場の空気は一変
 
沢山の人が祈りを捧げた。
 
 
「NBAのジョーカーまたか…。」
「スポーツ界の恥。」
 
メディアは彼を罵った。
 
 
彼のプレイスタイルと言えばハードさが売りで、
現役選手の中ではダントツのダーティーさだった。
 
いきすぎたラフプレー、トラッシュトーク、挑発行為…
 
そんな彼には何を言ってもいいという風潮がすでに蔓延していたが、
この事件でさらに過激になった。
 
面白半分で、彼のユニフォームやグッズを燃やした動画がSNSに溢れた。
 
 
悲劇の試合後の会見、彼はゆっくり歩いて登場した。
 
-確認しますが、あれはボールへ飛び込んだのですよね?
 
愚問だよ。
俺はバスケットボール選手だ。
 
-世間があなたを大批判しています。
もっとルールを守るべきだと。
 
ふっ、ルールね。
俺のディフェンスは現代バスケのルールから作った。
今日はそのルールを飛び越えてしまった。
 
-あなたは得点、アシストなど数字に残る活躍をできていない。
そして、この事件。自分を誇れますか?
 
誇れはしないが、恥ずかしくなんかないね。
俺はルールを破り、罰金を払う。
数試合出場停止をくらうことだってあるさ。
でもそれもまたルールだろ?
 
だから私は再びコートでプレーできるんだ。
 
そして、今日みたいな日。
俺が反則やラフプレーをする度、
自分自身深く傷付いているということは揺るがない。
金も家族も酒も女もこの傷は癒せない。
 
 
-それなのに、もっと技を磨き勝とうとは思わないのですか?
今が変わるチャンスかもしれない。
 
じゃあ聞くが、
俺はマイケル・ジョーダンか?
オスカー・ロバートソンか?
カリームやDr.Jになれるのか?
 
「勝者になり敵をつくるか、敗者になり友をつくるか」
 
どこかの誰かの言葉さ。
 
 
 

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