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Story

大尾

 
 
アンバランスなリズムを刻みながら走る、バイク乗り。
 
お布団でしっぽりと小説を嗜む私…。
 
うるさすぎる音とリズムをつくりだす手首をおもうと
 
もう………あー、いかん。
 
 
午前3時23分。
 
 
もしこの近所にバッハが住んでいるなら。
 
ねまきに裸足で家を飛び出し、
あの立派な髪の毛をふりみだしながら、血走る目で全力疾走。
 
なにがなんでもヤツを捕まえ
右ビンタからの左エルボーだろう。
 
「何時やおもてんねん!」
「んで、そのリズム好かん。」
「ちょっと、今から家きぃ!」
 
「は?なんて?誰やねん、お前」
 
「マフラーこんなケッタイなやつにしてるからわしの芸術的な美声が聴き取られへんねん!ええから、きぃ!」
 
ビタン!ゴツッ!
 
…………………………
 
今夜のチケットも即完売だった。
 
100年に1人の逸材と呼ばれる男の演奏に人々はうっとり。
 
そんな彼のもとにはテレビや雑誌の取材が殺到。
 
 
「あなたの音楽の原点とは? 何歳からピアノを?」
 
「んー、それがよう覚えとらんのです…。」
 
 
 

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