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はしりだした師走。

 
 
だんだん寒くなってきた。
 
「暑いのと寒いのやったらどっちが耐えられる?」という不服な質問に潔く答えられるほどに。
 
僕は、寒くなるとよく体調を崩す傾向があるみたいだ。
 
だけど傾向は単なる傾向で、寒くなってみないとわからない
 
 
小学生の頃、冬になるとタンクトップに短パンで登校して来て、
休み時間の度に外ではしゃいでるやつがいた。
 
夏は袖があったはずだ
 
 
そんな彼は弱肉強食を体現していたのか、誰かの優しい言葉の温かみでぬくもりを感じたかったのか、阿呆なのか。
 
みるからに貧乏な奴ではなかった
 
冬場の肌は縄跳びもボールも異常に痛がるから、少々不安げに彼を眺めていた。
 
彼の顔はずっと笑っていて奇妙で気持ち悪かった。
坊主頭だったし。
いやそれは関係ないか、ん、あるか
 
坊主頭で元気な人間はおばちゃん先生に気に入られるんだよね。
 
案の定「ほんまあんた元気やなぁ」と頭をなでなでされていた。
坊主頭がうっとりしていた。
タンクトップに短パンで。
 
おいまさか、これが欲しくて苦行僧のような事をしてきたのだろうか?
え?
 
誰かが囁いた、恋は盲目。
 
 
なんかお腹が痛くなってきたからじろじろ見るのはもうやめることにした。
 
 
 
あれからも冬は忘れることなくやってきた
 
高校生になった彼は僕の後輩として同じ部活に入ってきた。
 
冬になるとダウンを着込み、自動販売機で買ったお汁粉を飲んでは
「さむい、さむい」と連呼する姿が目の前にあった。
 
全然真顔だった。
 
 
おばちゃん先生は、今はもっとおばちゃんだよ。
 
縄跳びもボールもさぞ痛かっただろうに