loadingなう

Story

霜夜

 
 
「停電停電~」
「タキさんちょっとブレーカー見てきてくんない?」
 
「あのロウソクあるじゃん」
 
「えー、、昨日買ったばっかりだよ?昨日。」
 
「まーた、そんなこと言って。使うために買ったんでしょ?」
「今日はいつものTVもなし。最低限の灯りで食べる閻魔鍋です!」
 
「やだ」
「キムチ鍋だから」
 
「いやぁ、出来上がる前に停電しなくて良かったよ」
 
「人の話聞いてる?」
 
「鍋持っていくからコンロ用意して」
「あつつつつつ」
 
「こうなったらダメだ、タキさんは」
「私ブレーカーみてくる、暖房がないと凍え死ぬよ」
 
「ちょお、ちょ、ちょ、ちょっ…!」
「みてみみてみ」
 
「うわあぁ。」
「いいにおい…。」
「ほんとにえんま鍋だ、」
「いただこういただこう。」
 
「な?ロウソクがいい味出してるだろ?」
「こんな雰囲気の鍋なかなかないよ」
 
「まさに地獄じゃん、ぐつぐつぐつぐつ」
「でもさ。周りに余計なものがないと、なんか、味に集中できるね」
 
「毎日こうやって食べる?」
 
「もういい」
 
「うへっ、髭にマグマ飛んできた」
「かっかっかっかっかっか…」
 
「ねえ!その変な笑い方やめてよ」
「くっくっくっくっく」
 
「お互い様じゃん」
「かっかっかっかっかっか」
 
「だめ、真面目に食べれない、」
「くっくっくっくっくっ」
 
「かっかっかっかっかっかっかっか」
「くっくっくっくっくっくっくっく」
 
「くっくっくっくっくっくっくっ」
「ってかさぁ、外でずっとなんか鳴いてない?」
 
「なに?」
「かっかっかっかっかっかっ」
 
「ほら、あそこ、あそこ。からすだ」
「くっくっくっくっくっくっくっく」
 
「ベランダ?」
「かっかっかっかっかっかっか」
「ここが地獄の入り口だと思ってるのかもよ」
「かっかっかっかっかっかっかっか」
 
「ぎゃあーーーーーーーーーーー、、、」
「干しっぱなしの私のパンツ盗んでいったーーー!」
 
 
かっかっかっかっかっかっかっかっかっか
 
くっくっくっくっくっくっくっくっくっく
 
かあーかあーかあーかあーかあーかあー
 
かっかっかっかっかっかっかっかっかっ
 
くっくっくっくっくっくっくっくっくっ
 
 
 
「ママー、こんなところに凍ったパンツ落ちてるー」
 
「こら!そんなの絶対に触っちゃだめよ!」
 
 
 

前の記事:

次の記事: